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Artist

TITO RODRIGUEZ AND HIS ORCHESTRA

Title

MAMBO GEE GEE


mambo gee gee
Japanese Title 国内未発売
Date 1950-1951
Label TUMBAO TCD-021(CH)
CD Release 1992
Rating ★★★★
Availability ◆◆◆


Review

 往年の東映時代劇スターみたいな顔している。東千代之介か大川橋蔵の系統だな。きっとちょんまげが似合うだろうな。美空ひばりとの共演で「マンボ殿様捕物帖」とか観てみたいなあ。

 30年代の終わりにプエルト・リコからニューヨークへやって来たティト・ロドリゲスは、ザビア・クガード(ミゲリート・バルガスの後任ヴォーカリストとして加入)、ノロ・モラーレス、マチートなどの楽団をわたり歩いて、47年、はじめて自分のキンテート(5人編成のグループ)を持った。しかしわずか4か月たらずでグループは解散。翌年、“ティト・ロドリゲス・イ・スス・ロボス・デル・マンボ”の前身にあたる8人編成のコンフント“ティト・ロドリゲスとマンボ・デヴィルズ”を結成するに及んで、一躍スターダムにのし上がる。50年代初めには、ティト・プエンテやマチートの楽団とともに、ブロードウェイにあったパラディウム・ダンス・ホールのメインをはるなど、マンボ絶頂期を代表する人気楽団になった。

 本盤は、1950年から51年にかけてティコに残したロドリゲス最初期のナンバー20曲からなる。4管編成のトランペット、ボンゴとコンガのアフロ・キューバン隊にドラムスが加わりダイナミックでメリハリの効いたビートを展開。だが、プエンテとくらべると、全体に肩の力が抜けていてスマートな肌ざわりがある。ロドリゲスはパーカッションもよくしたが、メインはヴォーカルであったせいか、ティンバーレス奏者で生粋のニューヨークっ子であったプエンテよりもジャズからの影響をまぬかれている。

 マンボ全盛期の録音なだけに基本はマンボだが、マンボにありがちのギスギスした感じはなくて、チャポティーンのグァグァンコーに通じる陽気でさわやかな'YA SOY FELIZ'、軽快な疾走感がスリリングな'MAINA, GO!'、カリプソっぽいノー天気さに口許が思わずゆるむ'CHIQUI-BOP'(江利チエミあたりに歌わせたかった)、プエルト・リコの大歌手で作曲家としても著名なボビー・カポーによるマンボ・ボレーロ?'PIEL CANELA'、たぶんキューバあたりの黒人の民俗音楽(聞き覚えはあるが思い出せない)を題材に求めた'CHEN-CHER-EN-GUMA'、ズシリとしたビートがアルセニオっぽいアフロ・キューバン・ナンバー'EL RINCONCITO'など、ジャズ色の濃いマンボ一直線のプエンテにくらべてヴァリエーションに富んでいて素直に楽しむことができた。なかでも、わたしのフェイバリット・ナンバーは、キューバ直系の黒いソン・モントゥーノ'POLE LA MONTURA AL POTRO'。ロドリゲスの巻き舌が隠し味になっている。

 ペレス・プラードの大ヒット曲'EL MAMBO'(正式なタイトルは'QUE RICO EL MAMBO')をとり上げるあたりはかれのサービス精神のあらわれだろうが、ラテン・ジャズのチコ・オファーリルのインスト・ナンバー2曲('EL MAMBO HOP''MAMBO GEE GEE')までくるとはっきりいって退屈。

 けっして歌がヘタではないが、ラテン音楽の世界にはかれ以上に個性的でうまい歌手はゾロゾロいたから、正直いって声自体にさほどの魅力は感じていない。でも、やっぱりロドリゲスのヴォーカルが入っているのと入っていないのでは華やかさが全然ちがう。ただし、かれのステージ上でのパフォーマンスはブレイク・ダンスばりのド派手なものだったらしいから、たとえインスト・ナンバーだったとしても、ヴィジュアルがあれば楽しさ満点だったことだろう。

 なお本盤のほかに、姉妹編としてほぼ同時期の49年から51年の録音を収めた"MANBO MONA"(TUMBAO TCD-014(CH))が出ている。こちらにはロドリゲスの代表曲'MAMA GUELA'のオリジナル・ヴァージョン'MAMBO MONA'をはじめ、マチート楽団時代に共演したことがある伝説のコンガ奏者、チャノ・ポソのナンバー'BOCO BOCO''BLEN BLEN BLEN'ベニー・モレーコンフント・コロニアルの名演で知られるキューバのピアニスト/作・編曲家エルネスト・ドゥアルテの'DONDE ESTABAS TU'など全18曲を収める。変化球なしでマンボの醍醐味を心ゆくまで満喫したいのならむしろこちらがおすすめかな。


(6.10.02)



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by Tatsushi Tsukahara